10月25日。二度目の北京里帰り中の近況報告。

    大分HPの更新を怠ってしまったが、
    日本に帰っていろいろと落ち着いてきたので、
    そろそろ色々とはじめようと思っている。

    そんな中、少々唐突な話ではあるが、しばしの間、舞台美術を休業しようと思う。
    ひょっとして自分は舞台美術に向いていないのかもしれない、と思うからだ。

    昔から小さい物を作ってきた。
    小さい物を作るのが好きだった。今でも好きだ。

    美大に入学してから、舞台美術のデザインや発想の仕方、
    それをデザイン画やコラージュ、写真、模型を通して、
    どうやって作り手(大道具)にプレゼンテーションするのか、ということを学んできた。
    私は「舞台の模型」を作ってきた。

    そんなつもりでいた。

    このあいだ、9月の公演では、模型を製作しなかった。
    今までどんなにせっぱ詰まっていても、模型を作ってきたのに。
    制作図面や平面図でとりあえず、形がなんとなく伝わった気になり、
    そうなったとたん、模型は製作するのがイヤになった。
    時間がギリギリすぎて、真っ白な模型しか作れそうになかったから。

    その時に気がついたのだ。

    私はもう模型を単なる
    「平面図や製作図面を立体に起こした物」として消化できない。
    私が今まで制作してきたのは、きっと「舞台の模型」ではない。
    「模型の舞台」。
    模型のスケールで起こっている事が全てで、私の舞台だ。
    自分で照明を入れて、舞台の雰囲気を作り、撮影をする。
    学校で勉強していた時、それで満足していた。
    そして日本で芝居をはじめて、自分のデザインを使ってもらえた時、
    それはそれですごく楽しかったが、
    それはそれ、模型は模型で、別々に考える癖は取れず、
    「模型なら可能なのに」という考えは一人歩きする。

    自分の模型の可能性を試してみたくなった。
    自分の小さな世界を、小さいまま、使ってみて欲しくなった。

    そんなわけで、クレイアニメのセットの仕事と、
    模型制作のアシスタントの仕事を受けたのだ。
    クレイアニメは昔から私が追いかけてきたアーティスト集団、
    「リッター1,200円」のメンバーからのお誘いで、
    模型制作は、舞台美術で私が尊敬している方が
    プライベートで受けた仕事のアシスタントである。
    未知の可能性、未知の世界に心躍る気分だけれど、
    未知の挫折や失敗が、それの何十倍もあるんだろう、というは痛いほど承知だ。

    劇団のみんなに迷惑をかけることもわかっていて飛び出してきたので、
    もう、今は、前進あるのみ。

    何をするにも、おっかなびっくり。本当は小心者の私。
    壁にぶち当たって、砕けそうになっても、受け止めてくれる気がする。

    そんな小さな私が作る、
    小さな世界なら。